50人を乗せたイルカが追跡される…定置網に侵入「事実上の餌付け」:朝日新聞デジタル

2024-11-23

著者: 裕美

真っ暗な海面に、水しぶきが上がる。灰色の背鰭が波を切り、こちらに向かってくる。

私は一瞬ためらい、カメラを構え直す。捉えた映像には、本来そこにないはずの動物が映っていた。

今年9月7日午前1時43分。私は福井港沿岸の浮標に停泊していた。過去3年間で50人以上が乗り込むなどしていたイルカの行動を探るためだ。

オスのミナミハンドウイルカは、8月20日に福井県南部の笹波半島で55歳の男性をかんだ後、半島から姿を消していた。

最大搭乗人数は22人。19トンの船が、エンジン音を響かせながら3キロ先の漂流場へ向かう。

船首がサーチライトで周囲を照らす。黄色い浮き玉が海面に連なっているのが見える。浮き玉の下には、カーテン状の網が垂れ下がっている。

湾を回遊する魚は、カーテン状の網に行く手を阻まれると、その運動を妨げられ、四方を囲まれた巨大な生け簀(いけす)のような「網」に迷い込む。

その後の水揚げが始まってから8分後の午前2時11分。その瞬間は、突然やってきた。

真っ暗な海で記者が目にしたのは、専門家たちも「見たことがない」光景であった。記者の後半で、動物にともにお供えします。

暗がりの中でシュッと、そして大…