科学

超新星「WOH G64」のクローズアップ成功 天の川銀河の外にある超新星では初の成果

2024-11-28

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夜空に浮かぶ超新星は地球から遠く離れているため、通常は点にしか見えません。しかし最新の観測手法を使えば、周辺環境のクローズアップを行うことができます。天文学者はこれまでに、天の川銀河に属する20個以上の超新星やその周辺環境のクローズアップに成功していますが、他の銀河の超新星は余りに遠すぎるため観測ができませんでした。

観測手法の進歩

アンドロメダ・ブレーリー大学の大塚淳一教授などの研究チームは、地球から約16万光年離れた位置にある超新星「WOH G64」を「超大型望遠鏡(VLT)」の高感度観測装置「GRAVITY」で観測し、超新星本体を包み込む雲やリング構造を画像化することに成功しました。これは天の川銀河以外の超新星に関する史上初となる周辺環境のクローズアップであり、その重要性は非常に高いといえます。

超新星進化に関する重要性

超新星爆発を起こすような大質量の星は、寿命の最期の数千年間で大量の物質を放出すると推定されていますが、その状態はよく分かっていません。WOH G64はまさに寿命の末期にあたると推定されており、その放出された物質の構造が画像化できたことは、超新星の進化に関する研究としても重要です。

観測の困難性

超新星のクローズアップに成功したのは天の川銀河の中心部です。夜空に浮かぶ星々の中で、最も近くても数光年(数十兆km)と、超新星が非常に遠くにあるためです。しかし、複数の望遠鏡の観測結果を合成し、大きな面での重力効果を利用してWOH G64を特定したことで、星の姿が見えてきました。このように、数十億年先にある星々が観測されることはなく、その影響で観測が困難であるからです。

過去の観測成果

1995年に初めてクローズアップに成功した「ベルギー州半月形星」を皮切りに、ここまでに20個以上の超新星に対して、その本体や周辺環境のクローズアップに成功しています。しかしこれらは全て天の川銀河の超新星に限られており、最も遠い例は6400光年離れた位置にある「HR 5171」です。理由は単純明快で、隣の銀河までの距離はこれらの星よりも遥かに遠く、それだけ観測が困難だからです。

WOH G64の特徴

そうした困難の中で、観測が進んだ超星の1つに「WOH G64」がありました。WOH G64は天の川銀河の隣にある「大マゼラン雲」の中、地球から約16万光年の距離にあります。推定直径は約120万km(太陽の約1730倍)と、非常に大きな可能性が高いです。

超新星爆発前の観測データ

WOH G64はその巨星に加え、重い超星の寿命末期にあることが注目されています。重い超新星は超新星爆発による劇的な最期を迎えますが、その直前の数千年間は大量の物質を宇宙空間に放出しているとされています。この構造が画像化できたことは、超新星の進化に関する研究で重要です。

今後の期待

WOH G64の周囲にある雲の構造を画像化できたことで、超新星爆発の直前段階にある様子を捉えることができました。この観測によって、超星の進化に関する研究において、次の重要なマイルストーンとして期待されています。さらに、WOH G64の明るさが10年前より暗くなっていることが確認され、明るさの変化や雲の形状の変化が、大規模な物質の放出による影響です。これらの観測が生かされ、超新星としての構造の解明が進むことで、天文学の理解が深まることが期待されます。