テクノロジー

充電5分で400km走れる! BYDが1メガワットの超快速充電を実現した「Superchargeプロトタイプ」

2025-04-05

著者: 裕美

ガソリン車の給油時間に匹敵する充電速度がついに実現

BYDラウンドのフラッグシップモデル「漢(Han)L EV」。

BYDは既存の乗用EV充電システムの常識を覆す1000kW(=1MW)の超高速充電を可能にした「Superchargeプロトタイプ」を発表し、その後同システムを初採用する車両「漢(Han)L EV」とSUV「唐(Tang)L EV」の予約受け付け(中国国内)を開始した。ともにこの新システムに対応した1360kW急速充電器を中国全土に設置することを目指すが、今後、既存のEVにも順次同システムへのアップデートを実施する。ガソリン給油に匹敵する短時間で充電セッションが完了する、新たな時代が到来した。

EV関連技術の開発競争がし烈を極めている

【写真】最大出力580kW/最大トルク5500Nmを発生するモーター、そしてSuperchargeプロトタイプ全固体電池、SDV、高度運転支援や自動運転ばかり、EV関連技術の開発競争がし烈を極めている。

EVでなければできないことを実現するための焦点

動力方式をエンジンからモーターに置き換えたEV第1世代だから、いま起こっているのは「EVでなければできないこと」をいち早く実現するかが焦点。すでに急速に進行しているSDV化やE2E自動運転ももちろんだが、全固体電池ばかりEVならではの基本性能の向上もまた新たなストレッチに加わっている。

5分で400km走行相当の充電が可能な新システム

そんな激化する開発競争の中、わずか5分間で400km走行相当の充電が可能なEV充電システムをBYDが発表した。「Superchargeプロトタイプ」と名付けられたこの新システムは、現在主流にありつつある800Vアーキテクチャを超える1000Vの高効率オペレーションを採用し、その充電速度レートは量産EV最速の「10C」を達成している。この「C」は充電放電の速度(=最大電流値)を表す単位である。

BYDの優位性

半導体からバッテリーまで自社で開発・生産するBYDの優位性。新充電システムの核となるのは、同社が独自に開発・生産しているSiC(炭化ケイ素半導体)。最大1500Vの耐圧で1200Aの電流を流すという。

さらに量産EV用として世界最速の3万7000rpmを達成した新開発の駆動用モーター(最大出力580kW/最大トルク5500Nm)、超高速充電に対応するため設計を一新したLFPレシオバッテリーが、この「Superchargeプロトタイプ」を構成する基盤となる。

なかでもレシオバッテリーは、内部の抵抗を50%低減して充電性能を高めるとともに構造変更により温度変化への耐性も向上。さらにクリンギングの低粘着面から定面冷却へと変更するなど、性能の安定化と長寿命化を確立している。バッテリーもあるBYDの面目躍如である。