日本は高齢化が進む中、安楽死をどう考えるかが問われている。認知症の夫を持つ68歳の女性が、2023年1月16日に安楽死を選択した。彼女の最期の瞬間は、直前に訪れた家族とともに過ごした時間だった。

夫婦は朝食を共にし、彼女は最後の歩きを楽しんだと言う。”これが最期だと思うと、普通の気持ちで歩けなかったつもりもない”と、彼女の思いは強かった。彼女は、医師に安楽死の意志を確認されると、「はい」と返事した。この時、彼女は家族に見守られて安らかな表情を浮かべていた。

安楽死を法制化したオランダでは、認知症患者に対する制度も確立されている。多くの人々がこの選択を受け入れている中、依然としてその是非が議論されているが、彼女の選択が新たな議論を呼ぶかもしれない。

彼女の夫は「妻が安楽死を選んだことで、ようやく彼女が苦しみから解放された。私たちは彼女を救うことができた」と述べ、安楽死の制度に感謝の意を示した。彼女が選んだこの道は、夫婦の長い人生の中でも特別な決断であった。特に進行した認知症の影響で、日常生活が困難になり、妻自身が「ここまで生きる必要がない」と感じていたのだろう。

オランダでは、安楽死の法制化は2001年に行われ、その条件を満たすことで、患者は自らの意思で苦しみを終わらせることができる。現在、68歳以上で、病状が悪化している患者にとっては選択肢の一つとなっている一方で、安楽死に対する社会的な意識はまだ分かれている。

この事件は、高齢者や認知症患者がどのように最後の選択をすべきかについての考えを深めさせる契機となるかもしれない。ただし、彼女の選択から見えたものは、単なる「安楽死賛成」の声だけではなく、彼女の人生の最期をいかに意味あるものにするかという問いかけでもある。