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復興計画1万人で300万人が利用?「富士山登山鉄道」構想が浮上する背景とは

2024-11-17

著者: 健二

山梨県は10月28日に富士山登山鉄道構想の「事業化に関する中間報告」と「技術課題調査結果」を公表した。富士山麓(県道707号線脇にある交通拠点)と富士山5合目を結ぶ有料道路「富士スバルライン」上に、登山鉄道を整備するという大掛かりな計画が目指されている。

富士山の近くにある富士吉田市、富士五湖地域の集落、観光協会、地元企業が構成する富士五湖観光連盟、富士登山道の入口にある北口本宮冨士浅間神社、山梨県側の山小屋・売店が加担する富士山吉田口旅行業協同組合といった地元関係者が、山梨県の構想に真正面から対峙している。

富士山登山鉄道構想の概要と、実現に向けた課題とは。(鉄道ジャーナリスト 藤井保則)

登山鉄道構想の背景にあるのが2013年の富士山の世界遺産登録だ。この構想は2019年1月の県知事選で初当選した長嶺幸太郎山梨県知事が公約として提案し、当選後に設計された「富士山登山鉄道構想検討会」で検討が始まった。2021年には基本構想を策定し、2023年度には知事室直轄の「富士山登山鉄道構想推進グループ」を設置。2024年3月の「富士山登山鉄道官民連携方針検討」と絡めて、今回の中間報告が取りまとめられた。

背景にあるのが、2013年の富士山の世界遺産登録だ。富士山は遠くから見ても美しく近くで見ると非常に環境が悪いといわれ、登録にあたっても第37回世界遺産委員会決議と、それに先立ち発表されたICOMOS(国際記念物遺跡会議)の評価書において、富士山の保存管理を行うためにはさらなる対策や改善が必要であると指摘されていた。

観光の面でも、訪れる観光客が増加している。世界遺産登録前の2012年からコロナ前の2019年まで来訪者が2.2倍に増加しており、これに伴い自動車交通量も増加。登山シーズンの自家用車乗り入れ規制は大幅に緩和され、同時期の普通車は3分の2に減少したが、規制対象外の大型バスは3倍に増加した。総車両台数は減少したが、大型バスの増加で二酸化炭素排出量は6割近く増えている。

どの観光地にも共通することではあるが、富士山来訪者は特定の季節、特に日曜日に集中し、混雑した状態が続く。月別では登山シーズンである7~8月は70万人を超えるのに対し、1~2月は20万人を切る。さらに、その中でも平日と休日、お盆休みなどで大きな差が生じる。

大規模な登山者、観光客が集中することで、富士山の保全管理には、第一に必要な平準化と、そのために冬季の観光資源開発が必要である、というのが発表の要点にあたる。ただし、地域の観光資源やインフラを保全しながら、リスクマネジメントを考慮した持続可能な観光の推進が、今後の課題となるでしょう。