健康

高血圧、肥満異常症、糖尿病の中で「薬を指示通り飲んでいる人」が多いのはどれ?

2024-10-05

研究の背景

高血圧、肥満異常症および糖尿病患者の薬服用率を、同一対象内で比較した結果が報告された。慶応義塾大学医学部の松本真子医師、武林啓司医師らの研究によるもので、詳細は「Pharmacoepidemiology and Drug Safety」に8月15日付で掲載された。薬の非服用に関連する要因が、患者ごとに異なることも明らかになっている。

研究の目的

これまでにも薬服用率に関する研究報告は少なくない。しかしながら、異なる疾病で治療を受けている多数の患者集団を対象として、薬の服用率を比較調査した研究は限られている。この背景に、慶応義塾大学の松本医師らは、山形県鶴岡市で進行中の鶴岡メタボローム研究(TMCS)のデータを医療請求データにリンクさせ、心血管疾患の主要リスク因子である、高血圧、肥満異常症、糖尿病の患者の服用状況に関する調査を行った。

研究の方法

TMCSは2012〜2014年度に、35〜74歳の鶴岡市内の住民および被保険者1万1,002人が参加登録し、非感染性疾病に関するリスクに関する追跡研究が続けられている。なお、同市に居住している対象年齢人口の89%がTMCSの住民登録に参加している。

研究の対象

今回の研究では、TMCS住民登録のうち、2016〜2019年度の追跡調査に参加し、データ収集された中で、前述の3疾患いずれかの治療薬が処方され継続的に受診していた3,693人を解析対象とした。そのうち女性が47.5%、65歳以上の高齢者が80.9%を占め、BMI25以上の肥満が36.5%、高血圧が73.2%、肥満異常症が57.2%、糖尿病が17.9%をそれぞれ示していた。

服用理解度と服用率

また、自記式質問票に含まれていた既往症を尋ねる質問に対し、処方薬に一致した病名が正しく回答されていた場合を「服用理解度良好」と判定したところ、87.4%がこれに該当した。薬の服用率は、追跡開始から1年間以内の処方日数割合(PDC)で評価され、PDCが100%であれば患者は飲み忘れることなく服用を続けているとされる。

服用率の比較

心血管疾患のリスク因子として、PDC0.8以上を「適切」と定義した場合、服用理解度が高い者は高血圧の者で90.2%、糖尿病で81.2%、肥満異常症で80.8%であり、高血圧の患者と糖尿病の患者の服用率に有意差が認められた。

社会的意義

現在、食生活や生活習慣の見直しが求められる中で、本研究結果は、疾患に応じた適切な治療を行うことがいかに重要であるかを示している。また、不適切な薬の服用傾向が観察され、慢性的な病気に対する治療薬の使用率の向上が期待される。

研究の期待される影響

この研究は、患者の健康管理や治療に関する重要な情報を提供するとともに、今後の医療方針や公共政策に寄与することが期待されている。どうぞ、今後の健康管理に役立ててほしい。