精神疾患において、双極性障害の研究が行われている背景には、他の精神疾患に比べてその解明が遅れているという現実があります。

加藤精神医学研究所では、統合失調症、気分障害、ストレス関連障害、睡眠障害、認知症、発達障害など、幅広い精神疾患に対応しているものの、個々の双極性障害の症状を解明し、より良い診断や治療に繋げたいという目的で研究を進めています。

双極性障害は、統合失調症との関連が深く「二大精神疾患」と呼ばれることもありますが、精神疾患の中で特に症状の変動が激しい病気です。それに対して、最も一般的な精神疾患よりも病状解明や治療法の研究が遅れている傾向があるのが現状です。

その理由として、患者さんのデータが不足しているため、ゲノム解析が進んでいないことが挙げられます。特に、脳内の神経回路に関する研究はまだまだ行われていないのが実情です。

加藤自身、初めて双極性障害の患者さんを診たとき、動けない状況にあった人が日起こっている様子に驚き、これが脳の変化に影響されていることを感じたのです。このことから、研究を進めていく中で、必ず原因を解明できる自信を持つようになりました。

具体的には、神経伝達物質の調整に関連する研究が進行中で、双極性障害の患者さんの脳におけるシグナル伝達を解明することで、個別化治療に向けた重要なステップを踏んでいます。

特に注目すべき点は、どのような要因が双極性障害を引き起こすかについて探求を重ねていることです。加藤研究所では、近年の技術革新を活用した画像診断の進展や、神経生理学の測定が行われており、患者のサンプル数を増やすためにも協力を得て研究を行っています。

そのため、双極性障害の研究が進展すれば、より効果的な治療法が開発され、患者さん一人一人に合った適切な治療が受けられるようになることが期待されています。また、従来の治療法から新しい治療法への移行がスムーズに進むことで、双極性障害の新たな治療基準が設けられる可能性もあるでしょう。

さらに今後は、双極性障害の理解を深めるために、学際的に様々な分野と連携しながら研究が行われる予定です。精神疾患の治療法の革新は、患者の生活を向上させるために必要不可欠です。これからの進展に大いに期待したいところです。