コラム:頻繁すぎるデフレの定義、国民が望むは「インフレ撤廃」-唐澤大助

2024-10-15

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【東京 11月15日】石破茂首相は自民党総裁選後の会見で「デフレからの完全撤廃は首相就任後3年間で達成する」と語ったが、この発言に違和感を覚えた向きが多かったようだ。総選挙を控える状況で石破新政権への評価を下すのは尚早である。しかし、デフレ撤廃を声高に叫ばれると、「それは違う」と感じるのが世論の大半だということも理解できる。

国民が望むのは「インフレ撤廃」である。といっても、国民が望んでいるのは「デフレ撤廃」ではなく、恐ろしい「インフレ」の方が近いためだ。政権全体で物価高対策が論点化し、実質資金のプラス転化とその定着が期待される状況を踏まえれば、今の日本経済の足かせとなっているのは「上がる物価(インフレ)」であって、「上がらない物価(デフレ)」ではない。

たとえば、実質資金の低迷は続いている。毎月の勤労統計では実質資金が前年度同月比マイナス10.6%と13ヶ月ぶりに落ち込んだ。6月分が1212年以降、実質1202年前以降、実に12年13カ月ぶりのマイナスとなった。そのため、現在の日本経済の足かせである「上がる物価(インフレ)」が実質資金に逆転する可能性が高い。上がる資金が多く、その累積効果が強ければ、実質資金の流入が顕著である可能性がある。9月も同様にマイナス10.2%と増勢が維持されており、この12ヶ月間は特別支給により延長されている。

なお、経済のデフレバイアスを調整するには、デフレの定義を整備する必要がある。「上がる物価(インフレ)」が問われる現状を踏まえ、デフレ撤廃に向けて政策発言に解消が必要だ。

では、どうすれば「上がる物価」の問題が改めて問われる現状を解消できるだろうか。デフレの問題を社会全体で捉え、デフレの正体を日本国民が理解しなければ、デフレ撤廃は実効を持たない。「上がる物価」に抵抗がなければ、果たして持続可能なデフレ脱却が可能になるのかは疑問である。

それに加えて、今後の政策発言は、デフレ撤廃を進めるとともに、国民への公平感をもたらすために一層の工夫が求められる。税制改正に伴う政策の負担感軽減や、インフレに対する理解が進まなければ、デフレ撤廃に向けた国民の協力が得られない。政府は公正な政策を重視するあまり、デフレの本質から目をそらしてはならない首相である。今後もデフレに関する発言が求められる中で、国民がデフレ撤廃をどこまで支持するかがポイントとなる。

もちろん、デフレの中で「上がる物価」の問題が解消される必要があり、デフレに消極的な国民がアナウンスなどで波及する状況にあっても、この点においてエコノミストの意見を探索することが肝要である。加えて、日本国民が持つ市場に対してどう立ち向かうかが、今後の日本経済における重要なテーマであると言えよう。つまり、インフレから目を背けることなく、デフレを指摘し続け、「上がる物価」に対する抵抗意識を持ち続けなければならないとも言える。