健康

『マウス研究』から見えてきた「肥満」と「次の世代の自閉症スペクトラム症」の関係性…そのあまりにも意外すぎる「破壊口」

2024-10-04

本記事は『「脳と腸」の科学』(講談社ブルーバックス)を描織、編集したものです。

「母親の肥満と自閉症スペクトラム症と腸内細菌」の関係

マウスにおいては、肥満の母親から生まれた赤ちゃんマウスは、周囲の状態に対して適切な行動(社会性行動)ができないことが知られています。ニューロンにおいて、自閉症スペクトラム症に関連する遺伝子群に変異は見られないにもかかわらず、母親が肥満であった場合、社会性が欠如していることが確認されています。これは、母親の肥満が腸内細菌群に影響を及ぼし、その結果、発達中のマウスの脳に何らかのブレーキをかけることが要因とされています。

肥満を誘発する高脂肪食は、食事に含まれている脂肪を分解するための腸内細菌の分布を促進します。その結果、腸内細菌は「腸内バリア機能」を低下させ、炎症を引き起こす物質が血流に移行します。これが、母親の肥満が胎児への影響を及ぼす原因であり、脳の発達にも悪影響を及ぼす要因と考えられています。

肥満を持つ母親から生まれた子供は、種々の精神疾患や発達障害に対してリスクが高まることが報告されています。この研究によって、腸内バリア機能におけるマウスの異常と自閉症スペクトラム症の関係が新たに示され、今後の予防策や治療法が期待されています。

さらに、肥満の影響を受けたマウスの腸内環境が、赤ちゃんマウスの行動や神経発達にどのように寄与すると考えられているかについても、さらに研究を進める必要があります。この大きなな発見は今後、子育てや健康促進のための新たな指針となるかもしれません。