健康

もしかして世界の蚊を根絶したら? 生態系や人間生活への影響

2024-10-10

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米国では現在、蚊が大きな話題になっている。8月下旬、米国東部で東部ウマ脳炎ウイルスの感染が確認され、マサチューセッツ州の一帯に、夜間の外出を控えるよう警告が出された。米国立アレルギー感染症研究所の元所長であるアンストナイブルス氏も、ウエストナイルウイルスに感染して入院したという。

蚊の媒介する感染症が話題になると、注目されるのは蚊を完全に駆除する方法だ。しかし、蚊を駆除すればどうなるのか、生態系に何らかの影響を及ぼすことはないのだろうか?

当然のことながら、蚊がいなくなることが世界にどんな影響を及ぼすのかは、誰にもわからない。専門家の中には、「蚊を完全に排除できるならば、予測できないことが起こる可能性が高い」と述べる者もいる。

「蚊を完全に駆除すれば、予測でなければならないことが起こるのではないか」と米国魚類野生生物局の報告関係者は言う。問題は、地球上に約3500種類も存在する蚊が、どのような役割を果たしているのかを把握することだ。

多くの研究は、蚊に関するヒューマンインタラクションやその影響を調査しており、例えば、うるさい蚊を駆除しようとした場合、他の動物の生息環境に影響を与える可能性もある。そのため、完全に蚊を取り除くような試みには、注意が必要だ。

ある研究によると、蚊のいない世界では、別の動物が食物連鎖に入ることになり、これまでの生態系が再編成されるおそれがある。特に、蚊は多くの動物の食糧源でもあるため、蚊が減ることでそれに依存している生物が困難な状況に陥る可能性もある。

加えて、蚊の中には花粉を運ぶ役割を果たすものもおり、そのため生態系のバランスに影響を及ぼす必要があると言われている。例えば、雌蚊が花蜜を食べることにより、植物の受粉を手助けしている場合がある。

また、世界保健機関(WHO)によれば、毎年約70万人の人が蚊を媒介とする病気で命を落としている。このため、蚊を減らす研究も重要である一方で、彼らが果たす役割を知ることもまた重要である。

「我々が蚊を根絶できるのであれば、世界の健康状態が大きく改善されるかもしれないが、一方でその影響を十分に理解することも必要だろう」と語るエクスパートも多い。

さらなる研究が進むことで、蚊を防ぐ有効な手段や新たな技術が生まれる可能性もある。今後も注目していく必要があるだろう。