人間の脳がガラスに──79年の火山噴火で見つかった古代ローマ都市、壊滅の遺体に"黒曜石"に似た物質を発見!
2025-03-30
著者: 結衣
イタリアのローマ大学などが所属する研究者たちが発表した論文「79年のヴェスヴィオ火山噴火における人間の脳から形成された有機ガラスのユニークな構造」は、古代ローマ都市ポンペイで発見された遺体の頭蓋骨内から発見された、黒く光るガラス状の物質について報告しています。この発見は「脳がガラス化した」と思われる世界で唯一の事例です。
研究対象となった遺体は、ポンペイで発見された20歳前後の男性で、彼の脳の内部から発見されたこの黒いガラス状物質は、電気顕微鏡による観察で神経細胞やニューロンの微細構造が著しく保存されていることが確認されました。科学者たちは、この現象が高温の火山灰によって引き起こされたと考えています。
通常、有機物が高温にさらされると、分解してしまいますが、これは特異な熱条件下で形成された保全状態の良好な例となるでしょう。実際、79年の噴火時、非常に高温(510℃以上)として知られる火山灰が遺体を短時間で覆ったことで、ヌエンズやペトリファイケーションと呼ばれる急冷によって脳の細胞が保存されたのです。
さらに、研究チームはこの黒曜石に似た物質の形成過程を明らかにするため、詳細な熱解析を実施しました。510℃以上の高温が脳に直接作用し、数秒から十数秒という短時間でガラス状に変化させたと推測されています。これにより、このガラス化した組織は、周囲の温度の急激な下降と結びついて維持されるようです。
ヴェスヴィオ火山の噴火は、歴史上最大の自然災害の一つとされており、この研究は当時の人間の生態や文化について新しい視点を提供するものになります。研究者たちは、このような現象がポンペイ以外でも確認されることを期待しています。
この発見は、古代ローマの災害と人間文化の関係に新たな光を当て、歴史の解明に寄与する重要な研究成果として評価されています。