序論

人間は、一嗅ぎで一連の異なる匂いを識別することができ、その速度は従来の予想よりも10倍速いことを報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載されました。

嗅覚の遅さの認識

人間の嗅覚（嗅ぎ能力）は、一般的に反応が最も遅い感覚とされ、この認識には多くの理由が存在します。例えば、複雑な匂いの変化を測定することは難しいです。しかし、正確なタイミングで匂いを放出することや、長い時間分解能で神経活動を追跡することは難しく、これまで嗅覚を識別する能力についての正確な推定が難しいとされていました。

研究方法

研究者Wen Zhouらは、匂いを識別する能力を測定するために、高い精度で嗅ぎを行うことができる装置を作成しました。229人の被験者に、リンゴやタマネギ、レモン、および花の香りなど、異なる2種類の香りを与え、その順番や嗅ぎ間隔を変えて、識別できるかどうかを調べました。

研究結果

結果、一般的に一嗅ぎにつき1〜3秒の速度で発生することがわかりました。また、2種類の香りの提示の間に100〜200ミリ秒の時間差を設けた場合、被験者は混合物の香りが後者の成分よりも前者の成分により類似していると報告することが多かったと言います。これは、香りの成分が嗅覚に導く順序が特定されていることを示唆しています。

結論

研究者たちは、人間の嗅覚はこれまで考えられていたよりも迅速で、色の認識や他の感覚的な速度と同等であると主張しています。さらに、使用された香りの混合物の成分は、一般的に構造と香りの種類において異なることを指摘しています。また、構造が類似している香りを識別することは、より困難であるとも示唆されています。この研究は、我々の嗅覚が実際には思っている以上に高性能であることを示し、新しい発見が私たちの日常生活や嗅覚に関する理解を変える可能性があることを示しています。嗅覚の新たな理解は、香りに関する製品や食品の開発へも応用されることでしょう。