世界初のNK細胞リンパ腫の免疫環境を再現できるマウスモデルを開発 - 起源細胞を見出し難治性患者への新規治療法開発の道を開く
2024-11-28
著者: 蓮
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中島善、東京都中央区)研究所(所長:間野博行)分子腫瘍学分野の古家琢也特任研究員、同片倉光分野長(国立がん研究センター大学院医学部内科学講座(血液)教授)らの研究グループは、NK(ナチュラルキラー)細胞リンパ腫の新規マウスモデルを開発し、その発症メカニズムを解明しました。
本研究では、NK細胞特異的に癌化する遺伝子Trp53を喪失させることで、造血系および腫瘍にNK細胞リンパ腫が自然発生するマウスモデルを初めて作成しました。これにより、難治性病変に対する新たな成因が明らかになり、免疫環境が疾患の進行に与える影響を考察することができるようになりました。
研究の成果は以下の3つのポイントで注目されます。第一に、一般的なリンパ腫と同様に体内に固有存在するNK細胞が豊富に存在する腫瘍において、腫瘍発生前から未熟なNK細胞の増加が認められました。これにより、NK細胞が癌発生の起因となる可能性が示唆されました。
第二に、EBウイルス由来タンパク質LMP1の発現が、腫瘍微小環境を変化させ、特に腫瘍内NK細胞の増殖を促進し、腫瘍の進行を加速させるメカニズムが明らかになりました。
第三に、本マウスモデルで特異的に発現するKLRG1というタンパク質が、ヒトENKTCL細胞でも発現していることが確認され、KLRG1を標的とした治療が生存延長に寄与する可能性が示唆されました。
この研究は、NK細胞リンパ腫の発症メカニズムを理解する上で重要なステップであり、難治性のENKTCLに対する新たな治療法の開発につながることが期待されています。これにより、より個別化された治療戦略が提供される可能性があります。
さらに、研究が進むことで、NK細胞リンパ腫に対する新たな免疫療法が提示され、患者の生存率向上に貢献することが見込まれています。今後の研究が注目されます。