テクノロジー

ソニーの新生撮影素子「LYTIA」の役割とは? やばすぎる「カオスな命名規則」を整理しつつ考察する

2024-10-05

ソニーの新型撮影素子(カメラセンサー)、ちょっとカオス。

LYTIAはSONY(ソニーグループ)が発表したもので、「もっと感動を表現し、共有したい」というニーズに応えるものです。モバイル用CMOSイメージセンサーのプロダクトラインとなる予定です。

2022年11月に発表され、昨年後半からLYTIAブランドのイメージセンサーはLYT◯◯◯として商品番号がつけられるようになりました。

2024年には多くの中国のスマートフォンメーカーがLYTIAのセンサーを続々と搭載し始めています。

一方、LYTIAではない新しいセンサーの登場や新技術などの影響で、ブランドの全容がわかりづらい状態にあります。本記事ではLYTIAの概要や現状についてまとめます。

LYTIAに関する概要

LYTIA=二層トランジスタ画素構造ではない

SONYは2021年末にCMOSイメージセンサーの新技術として、二層トランジスタ画素構造を発表しています。この技術をLYTIAと組み合わせて「LYTIA=2層トランジスタ構造がある」という理解が生まれています。

2層トランジスタ画素構造センサーを指す用語はLYTIAではなく、正しくはXperia 1 Vのセンサーに搭載されたExmor T for mobileになります。

現時点ではLYTIAの商標番号があるセンサーのうち、LYT-T808のように2層トランジスタ構造と一緒に、LYT製品番号にTがついているのも見分けられるポイントになります。

また、ややこしいことにLYT-808が存在し、これが2層トランジスタ構造ではなく、他の特性もLYT-T808とは異なる別のセンサーであるため注意が必要です。

LYTIAとIMXの関係

LYTが登場する以前は、SONYのイメージセンサーはIMX989といったように、IMX◯◯◯の表記が定められていました。現在LYTの登場についてIMX表記は減少しているのか……と考えがちですが、IMX系のサンプルは登場し続けています。これがどういうことなのでしょうか。

実は、LYTのセンサーはLYTの商標番号だけでなく、IMXの型番も持っていることが分かっています。もっと言うと、その機種がスマートフォン側のアプリで取得できるハードウェア情報からLYT製品番号とIMX型番の対比が明らかになります。以下、GSMArenaからの引用です。

LYT製品番号 型番 採用メーカー

LYT-900 IMX06A OPPO,Xiaomi,vivo

LYT-T808 IMX888 OPPO,OnePlus,NIO

LYT-808 不明 OPPO,OnePlus

LYT-701 IMX890 Realme

LYT-700C IMX896 Motorola

LYT-600 IMX882 OPPO,Xiaomi,vivo、

Realme,NIO,Motorola

LYTIAとの対比があるにも関わらず、IMX896やIMX882で発表されているメーカーも多いです。特に中国HONORはLYTIAの対応のない新センサーIMX906やIMX816、IMX856を採用しています。

さらに、Motorolaは中国市場向けのMotorola S50ではIMX896表記がなく、同じ端末でグローバル市場向けのMotorola Edge 50 NeoではLYT-700Cで表記されています。

これらからIMXの型番で発表される理由として、LYTIAを名乗るのにはメーカーが要件を満たすことやそれも市場ごとに異なる契約となっている可能性があり、それらも考えつつ一般的に見られる可能性があります。

逆に、LYTIA発表以前から登場しているIMX890もLYT-701といった名前でリネームされているようです。Realmeはこのセンサーを世界で初めて搭載と謳っています。

デバイス情報が正しいとは限りませんが、もしかしたらIMX890であればこの宣伝文句は少し誇張に感じてしまいます。

このように、LYTIAの存在で同じセンサーでも名前の違いでスペック差があったり、別のセンサーのような印象を受ける影響を受けているとは思いません。

LYTIAの役割

ではなぜ、LYTIAというブランドを新たに組み込んだかが気になるところですが、筆者は2つの理由を考えました。

まずは、1つはSONY製のイメージセンサーのブランド価値を高めることが考えられます。

現在スマートフォンにおいてカメラの進化は大きなアピールポイントとなっています。特に近年のトレンドでは、望遠撮影や低照度撮影・動画撮影のニーズが高まり、多眼化やセンサーの大型化などによりカメラ部品にかけるコストが増大しています。

その中で、一昨年頃からSamsungやOmnivisionといった競合メーカーから安価な高性能なセンサーが開発され始め、SONYは一強が崩れかけている状況です。

そのため、ミドルレンジからフラッグシップまでのセンサーにLYTIAという新しいブランド名を冠することでブランド的価値を再創出し、シェアを回復したいという狙いがあるかもしれません。

また、IMXの型番に限界が出てきたため、LYTの商標番号を新たに設定したというのも考えられます。

IMXの104の位置数は世代が進むにつれ大きくなりつつあり、2022年のIMX989が登場したことで3桁の数で表現するのが難しくなりつつあります。LYT-900の型番はIMX06Aは新しい型番法則となりますが、以前の3桁のものよりも消費者にとってはなじみやすくなる可能性があります。

LYT製品番号は百の位が世代ではなく商品グレードで決まるため、今後はLYT-9XXやLYT-6XXなどの製品が今後同時に展開されることになるでしょう。

LYTIAは今後どうなる?

先述したように現在LYTIAとIMX型番のものが発表されていますが、インドリーカーのYogesh Bra氏によると、徐々にIMXにてのラインナップを終了し、2026年までにLYTに完全移行するとのこと。

完全に移行できれば、ラインナップが消費者にとってわかりやすくなるはずです。

現在、フラグシップ向けのLYT-900がXiaomi 14 Ultraに搭載されるなど、中堅スマートフォン向けの性能も次第に際立ちつつあります。近年のトレンドでは、望遠撮影や低照度撮影・動画撮影のニーズが高まってきており、多眼化やセンサーの大型化などによりカメラ部品にかけるコストも増大してきています。これにより、同型式の製品においても高性能な新しいセンサーの出現が増えているのです。

そのため、今後LYTIAのブランド価値がますます期待されることになるでしょう。