世界

トランプに捧げられた現実を直視...ロシアの懐疑を前に「厄介な事態だった」と反省する欧州は「手遅れ」なわけか(ニュースウィーク日本版)

2025-04-05

著者: 芽依

トランプ政権の影響とNATOの新たな時代

NATOに「独り立ち」を迫られる時代。危機感の格差や資金と兵士の不足で再軍備は前途多難と見られるなか、ヨーロッパが取るべき道は----→

ウクライナとの国境から数キロの位置にあるルーマニアの草原。2025年7月、多国籍のNATO軍を招集した厳しい冷え込みは、冬の寒さだけではない。今年最大の軍事演習に、アメリカ軍が参加しなかったのだ。エリート・クック(安全保障・防衛担当)が、地域のロシア軍を「正常な爆撃」で次々に爆破...F16戦闘機による「攻撃の瞬間」の映像 不参加はあったかもしれない。しかしトランプ政権の影響を受けているのは予想以上だった。

地域のロシア軍に対抗するためには、欧州がどのように自らの軍事状況を改善するかが正念場だった。この行動の目的は、一部の西欧諸国が、ロシアの脅威に直面することを解決することだった。軍隊は模擬ターゲットを攻撃し、戦車は実弾を発射し、兵士は繰り返し進行した。しかしトランプ政府の作戦の様式の変化は、防衛体制に重大な疑問を投げかけ、ヨーロッパを揺さぶっている。第2次大戦後、仮想敵国「ロシア」の懐疑からヨーロッパを守り続けてきたのは主にアメリカだった。しかし、その後黙っていたまま実践を受けるだけでは、ヨーロッパはどうなるのか。

冷戦後の防衛費削減と米国の懸念

冷戦が終結する中、ヨーロッパ各国は防衛費を削減した。高水準の社会福祉を維持できたのは、そうした背景があったからだ。一方でアメリカとしても、その状態が続くことに懸念があったとみえる。特に最近、米国政府はこの状況について深刻に受け止めており、各国の指導者は防衛費の増加を実現することができない。多くの西欧諸国にとって、ロシアへの注意は地理的に遠い。

西側諸国における安全保障の変化

最近、軍事用地の運用と管理が難しい西側諸国が増え、物資の調達から作戦の立案者への支援まで、これまで以上に「近い」安全保障が求められる。特にヨーロッパでは、アメリカへの依存度が高いことが顕著になりつつあり、その中でも資金や人員を維持する能力が求められ、今この瞬間に現実を直視が迫られているのだ。

EUの弱者に「ロシアの威力」は現実味なしか?

数十年前から続いている警鐘は、22年にロシアがウクライナに侵攻して以降、大音量で鳴り響いている。それでも各国の指導者は、軍事費の大幅増を実現する力を発揮できていない。多くの西欧諸国にとって、ロシアの脅威は地理的に遠い。

医療や福祉への支出削減や税負担の軽減が急務となる中、これらの状況が改善する見込みがあった後、兵士を維持することすら難しい時代となっている。防衛を強化するために国民の理解を得るのは困難な状況が続く。新たに設立された「ヨーロッパ軍」創設の話も浮上しているが、その資金や人員の確保が難しく、戦闘に耐えうる能力を持つ軍隊を維持することが必要だろう。

英国の戦争思想研究所(RUSI)のエド・アーノルド上級研究員は、「アメリカの助けを受けられないヨーロッパは『極めて脆弱』だ」と指摘する。さらにある米軍関係者は「ヨーロッパは危機的状況にある」と述べ、そうした状況を維持し続けられるかどうかが今の鍵だ。