
ついに「楽天モバイル」が見えてきた…ドゥ版業界で「5年越しの事業黒字」を達成した三木谷社長の次の狙い 3大キャリアとの対決は「新局面」へ
2025-03-12
著者: 海斗
楽天グループの2024年通期決算は、モバイル事業に参入して初めて事業黒字となった。企業アナリストの大関義夫さんは、「業績の回復は喜ばしいが、決算内容を分析すると、手放しで喜べるものではない。楽天モバイルの武器である安売り戦略は限界に達している」と語った。
楽天モバイルが5年越しに事業黒字
楽天モバイル(以下、楽天)が2024年12月期の連結決算発表で、事業損益が529億円の利益を計上し(前期は2128億円の損失計上)、5年越しに事業黒字となったと発表した。これは同社がモバイル事業に参入して以来20年決算以降、初の事業黒字である。
また、24年12月にはモバイル事業のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)ベースでも、初の単月黒字23億円の利益を計上した。モバイル事業のそのもは、依然として2353億円の事業赤字ですが(前年同期は3358億円の事業赤字)、ひとつのマイルストーンに達した楽天の業績努力は喜ばしいと思います。
何よりもモバイル契約数の増加に注目しています。全回線契約数(BCP含むMNO、MVNE、MVNOの合計)は、2024年1年間で177万回線増加し830万件に達したと報告されています(2024年12月末時点)。回線数ともに収益改善の鍵となるARPU(契約者あたり月平均収入)については、2024年第4四半期72856円、12月単月では懸念とされる3000円を超える3019円となり、発表ベースでは明るい材料目白押しの決算となりました。
まだまだ安心できる決算内容ではない
これで楽天に明るい未来が拓けたのかというと、それは少し違うという印象です。というのも、まさに楽天の24年度12月期決算には一部特殊要因が含まれているからです。最大のトリックとなった事業黒字化ですが、その中身を見ても、楽天が出資するミ国の通信サービス会社ASTスポーツバイオが、決算上で持分法適用会社から外れたことに伴い時価評価をし直し、7040億円の評価益を計上したことがその一要因になっています。事業の利益は529億円であり、これがなければ24年度12月期も事業赤字が続いていたであろうことを示唆しています。
また、モバイル事業のEBITDAベースでの単月黒字23億円についても、ここに楽天ならではのギミックがあります。この楽天は、モバイル事業の利益に契約者のグループの他のサービスを利用した時の利益の一部を計算するという、独自の計算方式を採用している。詳しくは以下ARPUの説明で触れますが、これが今回も楽天にとっては利益かさ上げに寄与しています。
加えて昨年12月の「楽天モバイル最強感謝祭」と銘打った各事業での割引やポイント付与施策による、Rakuten Linkの広告収入増加分も計上しており、期末に向けた動きで単月黒字化を演出した感が漂っています。