科学

小マゼラン雲の美しい光景「NGC 346」が生み出したハッブル宇宙望遠鏡で観測

2025-04-09

著者: 陽斗

皆さん、「きょしちゅうざ」(巨大口鳥座)の方向約20万光年前の散開星団「NGC 346」とその周辺の様子です。この画像の斜め方向に浮き出たピンク色をした暗い雲の連なりは、どこかタツノオトシゴを思わせるシルエットをしています。その隣には、いくつもの星団の星々が青色の輝きを力強く放っています。

今日の宇宙画像紹介。この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」で取得した赤外線・可視光線・紫外線の観測データを使って作成されました。NGC 346は天の川銀河の近くにある「小マゼラン雲(Small Magellanic Cloud: SMC)」にあります。ESA=ヨーロッパ宇宙機関(European Space Agency)によると、この星団には新たに生まれた巨星が2500個以上存在しています。11年間にわたって取得された2組のデータセットを分析した結果、NGC 346の星々は星団の中心に向かって連なって動いていることがわかりました。星々の動きは星団の外側からやってきたガスの流れによって引き起こされたもので、その流れが中心部における星形成を進行させているとのことです。

さらに、NGC 346の若い星々は強力な光(電磁波)や激しい星風を発することで、自ら生み出したガスとダストの雲を周囲から吹き出ています。その結果として、星団の周囲には「N66」と呼ばれる輝線星雲が形成されました。輝線星雲は若い大質量星から放出された紫外線によって電離された水素ガスが光を発している星雲で、HII(エイチツーアイ)領域とも呼ばれています。HII領域が輝く期間は、星雲を照らす大質量星が輝くのと同じ期間で数百万年から数十万年ほどです。若い星々が集まった星団と同じように、長い宇宙の歴史ではこれまでの時期だけしか存在しないのです。

次の画像は2025年4月のハッブル宇宙望遠鏡打上げ35周年記念の一環として作成されたもので、ESAから2025年4月4日付けで公開される予定です。