ビジネス

最低賃金1500円、目標は正しいか? 経済学者の見方極まる 日本経済新聞

2024-11-28

著者: 愛子

日本経済新聞社と日本経済研究センターは、経済学者を対象に、最低賃金を1500円まで引き上げるという政府の目標に関する調査結果を発表した。物価を上回る速さで最低賃金が上がれば、「賃金を減らす」(26%)との見方が「減らさない」(28%)とほぼ同数だった。最低賃金の急激な上昇は、従業員費を負担できない中小企業の倒産を増やす可能性があると懸念されている。結果として賃金が減るかどうかは経済学者の間で意見が分かれた。

日本経済と日本経済センターは15~20日に実施した「エコノミクスパネル」調査の一環で、従業員やマクロ経済学などの専門家46人から回答を得た。

政府は22日に閣議決定した経済政策において、2020年代の初めに最低賃金を1500円まで引き上げる目標を掲げた。近年の政府目標が達成されたのは、30年代半ばという前提だった。

調査結果では、消費者物価の2%程度の上昇率が20年代の初めから続くと見込まれており、最低賃金が下がるかどうかについて探る必要がある。現在は全国平均で1055円の最低賃金が29年までに1500円まで上がるなら、年平均の上昇率は7%程度となり、物価の上昇を大きく上回る。

経済学の古典的な理論では、最低賃金の引き上げで人件費が上がれば企業の雇用が減少し、失業が増えるとされている。2021年にはノーベル経済学賞を受賞したディード・カーク氏らは実証研究によりこの見方を否定し、その後、各国の経済学者が影響の測定に挑んでいた。

「賃金が減る」との見方を支持した東京大学の田中万理教授(開発経済学)は、「これまでの実証研究に基づくとパートタイムやアルバイトなど低スキル労働の賃金が減少する可能性が高い」と発言した。

「減らない」と答えた専門家の一つは人手不足の深刻化を指摘し、コロナ後の労働市場の変化を心配する見方が多かった。

しかし、調査では「どちらとも言えない」とする回答が最も多く、最低賃金の引き上げの影響に対する慎重な見方が広がっている。

さらに報告書では、政府が最低賃金を引き上げ続けるとの期待が根強いと分析され、多くの企業にとって賃金の引き上げが労働市場に与える影響についての詳細な検討が不可欠であることが示されている。