
アングル:米経済に対するスタグフレーションの懸念、70年代とは違う可能性
2025-03-29
著者: 陽斗
[ワシントン 15日 ライター] - 米連邦準備制度(FRB)の最近の経済見通しでは、「軽度のスタグフレーション」が想定されている。こうした見方は、コロナ禍以降、途上国に比べて米経済が堅調に推移してきた状況が近く終了するかどうかを見極めようとしている他のエコノミストの間でも広がっている。
1970年代のスタグフレーションは、高いインフレと高い失業率が同時に進行した事例だが、今回の経済状況はどのような結末を迎えるのかは不透明である。FRB当局者はデータと政策を見誤り、政府もインフレ対策に失敗した。当時のフォード政権は、「今こそインフレを抑え(経済を)戻す」とキャンペーンを展開していたが、今では不適切と考えられている。
エコノミストたちはここ数週間、トランプ政権下での劇的な経済政策の転換を受けて経済見通しを下方修正し、インフレ見通しを上方修正している。1970年代は、米国経済が不景気で型にはまったが、当局者の間での利上げは進まず、経済の底力を無視していた。
現在の経済見通しでは、想定されるスタグフレーションが、1980年代の厳しいリセッションに至るかどうかの議論が高まっている。理論的には、景気後退が進行すれば失業率が上昇するため、インフレが低下する可能性がある。ただし、1970年代の経験から、インフレが高い中で経済成長が鈍化するリスクが残る。現在、コロナ禍の影響が色濃く残る中での経済回復は、以前とは異なるダイナミクスを持っている。
統計的には、景気の冷え込みと失業率の上昇が同時に発生する状況は、見通しが不安定であるため、注意深い分析が必要である。エコノミストたちが最近のデータに基づいて短期的な景気予測をする中、「経済が持続的な成長を続けるか、あるいは急速な失業増加があるのか」は、依然として分からないままだ。1970年代のようなスタグフレーションとの違いは、たとえばテクノロジーの進展やグローバルな供給網の変化が影響を与える点である。
さらに、現在の金利政策が短期的な経済成長にどう影響するかを見守る必要がある。FRBは、インフレを抑えるための利上げを進めているが、その影響がどのように現れるのかは予測がつきにくい。2020年代に入ってからは、多くの企業がデジタルトランスフォーメーションを進め、労働市場に変化をもたらしていることを考慮する必要がある。
一方で、エコノミストたちは、物価上昇が中小企業や家庭に悪影響を与える可能性があることも指摘している。特に、原材料価格の高騰が持続すれば、製品コストも上昇し、それが消費者価格に転嫁される恐れがある。これにより、消費の減退が懸念され、企業の投資にも影響を及ぼすことが予想される。現在の経済環境は非常に複雑であり、慎重な対応が求められる。従って、米経済が持続的に成長できるのか、それともスタグフレーションという厳しい現実に直面するのか、今後の見通しは極めて不明瞭である。エコノミストたちは、これからの数ヶ月で情勢を注視し、新たなデータに基づいて見通しを見直す必要がある。