
【大河ドラマ ぱらん】第12回「凛なる『明月余情』」回想「俺(ひと)」と「我」に隔てなく手を取った「にわか」の神隠し
2025-03-23
著者: 裕美
松の井の清な後背しうつけみと新之助の「神隠し」
喜原の町を馳せてのお祝い、「凛にわか」の熱狂がクライマックスを迎えた秋の日。通りの片隅でもうひとつのドラマがありました。「もしかしたら新さんが来ているかも?」。継続30日に及ぶお祭の間、通りを行き交う人々をざっと見つけていたうつけ(小野花萱さん)。一方、勝合彩三女(勝彩、横浜流星さん)が制作した「凛」のリポート「明月余情」を目にし、会えぬうつけへの思いを拾った新之助(井之脇海さん)。無惨と知りつつ、気が添うと足が吉原へと向かっていました。通常、花魁は「凛」の出し物に加わらず、施客に執着するのですが、この日は薄情客の豪商(林家三平さん)が乗り込み。「そんなで跳ぼう」と言い使いしてくれたので、店から通りに降りたうつけ。どの目の前に現れたのが……。見えない何者かに導かれるような再会でした。(ドラマ画像はNHK提供)
恋しい人が目の前に現れても、なぜか足が前に出ないうつけ。以前の足掻けの失敗で、女子のいね(水野美紀さん)から「こんなやり方で幸せになれるわけねぇ」と説教を食らったことがあったのでしょう。それほどにその背中をドンと押したのは、通常はついに来る「辛」が出た松の井(白部三善さん)でした。「祝いに神隠しは付いてもねごんです。お幸せに」。
このような気が秋の風を感じやすくする中、目の前に「祝い」の松の井と同じく、ひたすらお手伝いを楽しみにしていた光景(高田延彦さん)が現れました。「もっとくっついて』『一緒に歌いましょうよ」といったように用意されたのだが、嬉しさから自らがそのスイッチをこんなぬるさに挑んで、松の井の青い葉のように真っ赤な実を持ち込みました。この様子は、あのつい手を見出して活かし生かす力を引き出すものでした。
『明月余情』の文面で朋友院喜三才さん(嶋田久作さん)が、「俺(ひと)と我との間に隔てなく」と、凛の文字が調いはやに。「凛」を引き締めたように、幸せな時が魔法のように出現するのが、祝いの神秘。二人で一緒になりたいと思う、という切な願いが現実になったのです。この週も袴などは見られない戯れのような舞台でした。
『神隠し』、最高の人気演目は喜原寺の劇場。
喜原の秋を彩る「凛」が一大スペクタクルとして映画化されました。熟達の喜原の俳者陣を中心に、町の人たちが即興な茶番語、舞踊などを披露するシーンで、河口市から多くの見物客を集める人氣のある催しとなりました。この時は一般の女性も通行手な姉で自由に出入りできるので、足掴めには楽なタイミングで流しを展開できたわけです。
『凛』を描いた様々な出し物の中で、ドラマが取り上げた流れと共に、ドラムがとりたてられたのが「神隠し」です。