
コラム:日銀の5月利上げと円相場、それでも遠い円の反転シナリオ=内田淳氏
2025-03-26
著者: 蒼太
【東京 12日】 - 日銀は、3月に開催された金融政策決定会合で大方の予想通り、政策金利を据え置いた。記者会見で植田和男総裁は、トランプ政権の提案する減税政策を踏まえ、政策金利の上昇を言及した。高い不確実性が影響を与えていることも相まって、金融緩和を続けていく方針を強調した。 一方、政策金利からインフレ率を引いた実質金利がなお大幅なマイナスである点を挙げ、金融緩和の継続が企業や個人にとって有効であるとの見方を示した。しかし、政府のデフレ脱却方針には疑問符がついている。日銀の政策金利を引き上げるには物価上昇の持続性が前提となるため、そう簡単には実現しない見込みだ。
【利上げ、7月から前倒しへ】
こうした中、市場ではおおよそ利上げが春の見通しを持ってきた。7月からの利上げ確率がすでに80%を超えている状況で、利上げを巡る緊張感が高まっている。このような状況において、日銀はしっかりとしたガイドラインを示すことが肝要だ。日銀が明確に利上げを示唆することにより、マーケットもそれに即した反応を示すことが期待されている。
【日銀と政府の関係性】
一方で、ここまでの強い物価上昇にもかかわらず、日銀は政策金利を上げるリスクを取りづらい。これを受け、政府に対しても日銀とともに経済政策を強調する姿勢で臨んでいる。政策のうちには減税策や公共投資の拡充など、今後の経済成長に寄与すると思われる施策も含まれており、これらが実施されれば、日銀の金融政策にプラスの影響が及ぶ可能性がある。
【利上げの効果】
利上げが実施される状況が整ったとしても、果たしてそれが経済にどのような影響を与えるのか。近年の金利が低い状況下での利上げは、企業にとっての資金調達コストを引き上げ、設備投資が減少する懸念を禁じ得ない。特に、グローバルな経済環境が変化している中、日本経済も他国と連動する形で影響を受けるであろう。また、円の強化が輸出業者に逆風となる可能性があることも考慮しなければならない。
【中長期の見通し】
日銀の政策金利の変更が、市場にもたらす影響は大きく、そのため、今後の方針については密接に注視していく必要がある。特に、円相場がどのように反応するかは重要なポイントとなる。経済指標の改善が見られた場合でも、政策金利の上昇が必ずしも円の強化につながるとは限らないからだ。円の行方は、個別の経済指標だけでなく、グローバルな経済動向にも大きく影響されることを理解する必要がある。これからの市場の動きを注視しつつ、どのように日銀が金融政策を運用するかに関して、期待と懸念が交錯することが予想される。