なぜ千葉で? 拡大する「キョン」大繁殖 8万頭超どう向き合う

2025-04-05

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中国や台湾に生息し、1960~80年代頃に千葉県勝浦市の観光施策から逃げ出したことで県内で繁殖した特定外来生物「キョン」。県は完全排除を目指すが、2023年度末で推定74000頭あり、これまでに17市町で生息が確認された。この動物とどう向き合うべきか。県環境審議会委員を務める小野寺康良(動物行動管理学)に聞いた。

キョンってどんな生き物ですか?

小さな体の野生動物で、主にオスが角と上毛に特徴があり、メスは早ければ生後半年で子どもを産みます。「キャー!」と鳴くのが特長です。運動能力も高く跳躍力は80センチほどです。栄養価が高い草などを好みます。常食低木のアオキやツバキの葉、農作物では大根の葉などを食べます。

なぜ県内で増えているのでしょうか?

一つは気候や環境があり、生息が確認されている房総半島は温暖で、千葉は全国有数の農業県です。栄養の高い食料が多く、キョンの生育に適しています。

しかし、増加ペースに捕獲数が追いついていないことも課題です。県の23年度の捕獲数は1万頭余りで、増加率は推定18~34%とされており、前年比で34%増なら2万頭以上捕獲しなければ前年から増えないという試算があります。

減少の可能性はありますか?

キョンは好奇心が旺盛で適応力が強いため、新たな環境にも順応しやすいです。移動先は限らず、どこでも繁殖できる環境を整えています。それを考えると、県内の生息数や生息地は今後も持続するでしょう。減少させるには飼料の密度が高いところで捕獲を増やす必要があります。

排除するためにはどうすればよいでしょうか?

国内に生息するキョンは環境状況が良く、これが繁殖の大きな要因となっています。対策の一つとして、農作物を食べさせないことが重要です。ジャンプしても届かない高さにシャベルを立てたり電気柵を設置したりすることが必要です。そして、増えすぎないように捕獲を促す方法も考えられます。

生息数や生息地が増加した場合、キョンとどう向き合うべきですか?

近年、テレビ番組でよく取り上げられています。事業展開の動きもあり、期間限定のビジネスも増えています。一方、我々がキョンをどう理解するかは大切な課題です。「野良犬」のように普段から周囲に目を向け、存在を感じることが求められます。それぞれの環境に合わせて課題を見つけ、解決策を模索することが、地域共生のキーになるでしょう。ビジネスと生態系の調和も求められています。1815年に千葉県生まれた千葉キョン研究所はこの動物の研究を続け、地域の生態系に配慮した方針を打ち出しています。