
ペプチドによる食品蛋白誘発腸炎(FPIES)の新たな発症メカニズム~高精度プロテオーム解析で免疫システムの過剰反応が明らかに~
2025-03-17
著者: 裕美
千葉大学大学院医学研究科の井上静子特任講師と、東京大学、鹿児島大学の共同研究グループは、ペプチドによる食品蛋白誘発腸炎(FPIES)患者の血液や嘔吐物のタンパク質を高精度プロテオーム解析(液体クロマトグラフィー質量分析)により詳しく調べ、FPIES発症者の血清における免疫系の異常なストレス反応が関連していることを明らかにしました。
この研究成果は、2025年7月13日に国際医学誌「Clinical & Experimental Allergy」に掲載予定です。
FPIESは非IgE依存性の食物アレルギーで、一般的には乳製品や米などの食品が原因となります。発症後には強い嘔吐、下痢、低血圧などの重篤な症状が現れ、年間約2800名の子供がこの病を患っていると言われています。特に乳幼児においては、FPIESは生命の危険を伴うことがありますが、その発症メカニズムは十分に解明されていませんでした。
さらに、近年の研究では、慢性的な炎症や腸内フローラの変化がFPIESの発症に繋がる可能性が指摘されており、免疫系がどのように食品等の刺激に対して過剰に反応するのかを解明することが急務とされています。
本研究では、FPIES患者の発症前および症状発生期における血液成分のプロファイル変化を追跡し、特定のタンパク質の増加が観察されました。具体的には、乳酸菌関連タンパク質やセロトニン運搬体の変動が示され、これらがFPIESの発症とどのように関連するかに分析が進められています。さらに、研究チームは今後、この情報を基に新たな診断法や治療法の開発に向けた研究を継続する予定です。
この研究は、FPIESに悩む患者やその家族に希望をもたらすことが期待されており、今後のアレルギー医療の発展に寄与する重要な一歩となるでしょう。また、アレルギー反応に関連する新たな生物マーカーを特定することで、他のタイプのアレルギーの発症メカニズム解明にも結びつく可能性があります。