健康

「人間関係の3割超?」愛着障害が平均余命に影響する 概念1歳半までが愛着形成に重要な時期

2024-10-12

著者:

長年、発達障害や愛着障害を研究し続け、豊富な臨床経験を持つ精神科医・岩田さんの最新刊『愛着障害と複雑性PTSD』より、現代人の生きづらさの原因を解説します。

● 生きづらさの正体

「愛着障害」という言葉が、一般にも広く知られるようになったのは、ここ10年ほどのことです。40年前に、この言葉が初めて公式に用いられた際、その意味するところは、深刻な孤独や身体の発達や社会性に困難を持ち、極めて悲惨な子供の状態を指していました。その厳しさは、非常に多くの人が引き受けていることがわかっています。

また、その後の研究で、そうしたケースに外部にも、母親との不安定な愛着を示す子供たちが、人口の3割程度かそれ以上にも及んでいることが分かったのです。

こうした「不安定型愛着スタイル」のケースも含めて、「愛着障害」として理解されるようになったのです。愛着障害を抱えた人は、一見すると「発達障害」という特性を示すことは少ないのですが、多くの場合、対人関係、特に親密な対人関係において、苦痛を強く感じることが多いのです。

● 自身肯定感の低下や心身の不調

愛着障害を抱えている人は、1歳半までに形成される愛着が形成されなくなると、自身の存在意義や自信を失ってしまうことがあります。これにより、心身の健康が損なわれることにも繋がり、自らの心に様々な問題を抱える要因となります。

愛着形成が陥る時期は限られていて、概念的には1歳半までが最も重要とされていますが、これ以降も愛着形成がされることはあります。しかし、この時期に愛着が形成されなかった場合の影響は非常に深刻で、子供においては自らの存在を不安定に感じ、強い孤独感を抱き、対人関係においても大きな困難を抱えることが多いです。

包括的に言うと、愛着障害を持つ子供は、自己肯定感の低下や心身の不調を経験することが多く、これが後々の大人になった時の平均余命にも悪影響を及ぼす可能性が高いことが指摘されています。

このように、愛着障害は簡単に見逃されがちな問題ですが、そこで育つ子どもたちの心の健康やその後の人生に及ぼす影響は計り知れず、特に自らの居場所やコミュニティの中で愛着を深めることの重要性は、ますます認識されています。愛着障害の早期発見と適切な支援が、子どもたちの未来において不可欠であることを忘れてはなりません。