科学

世界から見ても異常「引きこもり大国・日本」なぜ日本だけが特異なのか?

2025-03-30

著者: 健二

日本社会に蔓延している「引きこもり」の状態

日本の引きこもり問題の特異性を語るには、他国の状況と比較して考える必要があります。

ヨーロッパ諸国でも、不登校や若者の社会的孤立、いわゆる「ニート(NEET)」と呼ばれる状況が存在しています。しかし、彼らは他国と比べ社会に出ることを避けている若者たちで、出現率も相当数確認されています。特に韓国や中国でも、社会に出ることを避ける若者が一定数存在することが報告されています。

それでもなお、日本の「引きこもり」問題は、「一時的な状態」であるとされ、数年以内に再び社会に出るケースが多いと言われています。しかし、年間の年齢層は引きこもりの中に集中的に分布しており、特に40代以上で引きこもり状態にある人々も増加しているという現実は見逃せません。

例をあげると、シンプルな引きこもりの数を比較した場合、国民に対する引きこもりの割合は

日本:4.2%韓国:2.3%香港:4.1%イタリア:4.2%

と別段日本が特別高い数字を示しているわけではないことがわかります。しかし、ここのデータは異常ではなく、他国ではあまり出ないという話があります。

また、内閣府の調査(2016年)によれば、日本の15歳~39歳の引きこもり経験者はおよそ35%が7年以上引きこもり状態にあるとの報告もされており、さらには40歳以上の中高年層の引きこもりが増加傾向にあるというデータもあります。

他方、韓国の引きこもりの平均年齢は20代半ばであり、長期化するケースは少ないと言われています。イタリアでも引きこもりは比較的若年層が多い傾向にあります。

つまり、日本の引きこもり問題は、年齢・持続期間において「世界でも異常」といえる状態にあるのです。

なぜこのような差が生じたのか?

その答えを探るには、日本に特有の「社会構造の問題」をみる必要があります。

特に、背景にあるのが高い経済成長率に伴う成功モデルの確立です。1950年代から70年代にかけて、日本は世界が驚くような経済発展を遂げました。この時代、良い学校に入り、安定した企業に就職し、定年まで働いて引退するというキャリアモデルが確立されました。この過程で、「良い学校に入る」ことが重視され、社会勉強を経験することなく、人生の大部分を企業に投じる人が増えました。

そのため、教育システムや労働市場の変化にもかかわらず、上記の成功モデルに固執することで、引きこもりや社会の不適合者が生まれる結果になっています。最近では、なんとか「就職をする」がそれに従わず、未成年の子どもでも社会に出ることや、別の事業に挑戦することが難しいとされています。

加えて、日本社会においては「家」を単位として強く信頼するため、家族構成の変化に対する抵抗が強く、「家」がもたらすプレッシャーが個人の決断に大きく影響を及ぼします。

結果として、日本は世界で最も成功したとされる「引きこもり」という状態に到達してしまったのです。これらの要素が重なり合い、若者たちが長期的に引きこもりを選択する状態が生まれやすくなっています。