
科学
小型原子炉の進化と始まった市場競争 「日本の投資は米中の数十分の1」:日経ビジネス電子版
2025-03-18
著者: 弘
技術で先行し、事業で後れを取る−。日本の製造業は様々な分野でこうした苦しい状況に陥っている。原子力産業も同じく厳しい立場にあり、国内大手企業の開発が進む中でどう投資を行うかが問われている。
カナダの最大都市トロントから車で東に約1時間、オンタリオ湖の端にある「デュアル・スプルール」と呼ばれる小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の建設予定地。日立GEニュークリア・エナジーが開発に着手し、2028年に初号機の設置完了を目指している。発電所の使用合理性とコスト競争力を両立させるとのことだ。
交付電源や人の操作がなくても数日間冷却ができ、事故のリスクを下げる技術を搭載。既存原発の出力が100万キロワット程度なのに対し、SMRは30万キロワット以下である。欧米を中心に大規模炉の建設が進む中、小型炉の需要が高まっている。BWRX-300にも海外の電力会社やIT企業から問い合わせが寄せられている。
また商用運転に関しては、ロシアが20年5月、中国は23年12月から開始。いずれもBWRX-300とは異なる方式だが、先行している。
進まない規制整備
日本では、原発の再稼働や既存技術の延長線上にある革新軽水炉導入の議論が進んでいる。一方、既存原発と構造が大きく異なるSMRでは安全基準や規制が整備されておらず、外資と組んで知見を深める必要があるとされている。また、技術や投資が米中に対して劣後しているとの懸念も広がっている.