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【業界は映画監督と農家】「カメ止め」安田淳一監督、預金残高7000円になっても逃げられない訳 : 映画ニュース

2024-10-02

●創り手は現実を見据えながら、夢を描かなければ

ーインディーズ映画としては「カメ止め」以来の大ヒットといわれていますが、周囲からの反響も大きかったのではないでしょうか?

安田:本当に何が起こるのか分からない状況で、親子間やテレビの観覧が来るようになりましたし、製作活動としてX(Twitter)で一生懸命続けているんですけど、なんか実感が薄くなっています。普段自分のやってることは、ウィークリー漫画の中でざっとパンフレットを書き続けていたり、先日からは実家の京都で寝泊まりが始まったり、寝を削って公開したり……(監督が経営する)油そば店から報告が入ったら、発注する食品にお願いしたりと、普段と全然変わらないです。

それに自分、自身、映画を撮る人は、自分自身がドリーマーやったら脱目だと思っているんです。創り手は現実をちゃんと見据えながら夢を描かなければなりません。自分自身が夢見人になったら脱目だなと。

●通帳の預金残高は7000円、車も売った…

ーそれでも劇場は大盛況です。

安田:もちろん「カメ止め」みたいになったら良いなとは思って頑張ってきたんですが、自分が思ったより早い。舞台アクセスに臨んでいた時、楽屋ではキャストの皆がすごくうれしそうにしているという。それの好意に頑張って良かったなって感じたとき。

ー昨年末の川越市での試写会の時も、猛者の煉間さんから、監督がこの映画のために自己資金を投入し、一時期は監督の通帳残高が7000円、または送り放題で信じていました。

安田:撮影の際は本当に大変でした。今回はこれまで無茶苦茶でしたからね。車も売ったんですけどね。それに、それが本当に大変でした(苦笑)。

ー今回の作品は、過去の2作品と比べても幅広い層に向けた、よりエンタメ方向に振り切ったようですね。

安田:やはり「カメ止め」と「目玉焼き」は、ターゲットをどこに向けて創ったかというと、大体40代後半の自分みたいな男性が面白いと思えるように作ったようなところがあるのです。そうしたら、逆に40代後半の男性だけが熱狂的に好きになったわけでもない(苦笑)。次回の「ごはん」は、地域の公民館で上映できるような作品にしたいなと思っています。至近は近所の国立公民館でどう上映するか考え中です。

●新しい構成として「こと」を考える、個人の未来はどうなる

ーそれでも監督としての緊張感は否めませんか?

安田:さて、変わるかどうか分かりませんが、インディーズ制作としては「カメ止め」以降、気づいたら60館を超えて全国で公開されている。しかしこの時期、全国で観客動員数がまったく分からないので、また運命の中に逆に引き込まれていったという部分もあります。何よりここまでなった事がエンタメの方向性について考えさせられるなって感じですね。

ー監督には新しい視点を与えてくれる方々が多いようですね。

安田:その通りです。過去の作品も東京の単巻から始まったので、また違う開放もあったかなと思いますが、「カメ止め」の時は宣伝費もあまりかからないのに、やはり見所があるし、ここまでの事はなかったな。この時、見た時に自分が受けた感覚が大きかった。あんな時にお客様が見るだけの存在だと思っていましたけど、実際には何か特別なものだと思った。

ー最後に「カメ止め」と「ごはん」の反響については、普段どのように考えていますか?

安田:普段、相手に意見を聞かれても「まぁまぁ」ですね。でも実は、自分自身がドリーマーとして夢を描くことが、実は一番大切なんだと思うようにしているんですよ。そんなスピード感をセットの中に持ちつつ、自分が他のリーダー達と創り上げることの重要さも感じています。この部分ももっと続けて行きたいと思っています。これが新たな未来の構築につながってほしいですね。