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役立つ音声を強力に聞かせる攻撃 "外音取り込み"を駆使した実験も:Innovative Tech

2025-03-18

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最近、未来大学と神戸大学に所属する研究者たちによって発表された論文「UltrasonicWhisper+: 超音波によるハイブリッドデバイスへの可聴音生成攻撃」は、周囲の音を拾える仮想の指示や環境音を通じて提案できる超音波攻撃についての研究報告です。

ワイヤレスデバイスは、外部の音を取り込みユーザーに提示できる外部音取り込み機能を有しています。この機能は、例えば会話をしたり、車の接近に気づいたりするのに役立つと言われています。しかし、この機能を悪用し、着用者を攻撃することが可能であるという危険性もあります。

マイクには「非直線性」という特性があり、超音波を受け取ると内部で可聴音に変換されることが知られています。攻撃者が超音波を発生させると、イヤフォンの外向きマイクがこれを受信し、内部で可聴音に変換され、イヤフォンのスピーカーから着用者の耳に届けられるのです。周囲の人には超音波は聞こえないため、イヤフォン着用者だけに音が届くという現象が起きます。

システムはPC、アプリ、超音波スピーカーアレイ(200個の小型超音波スピーカーから成る)のもので構成されています。この攻撃で想定される脅威は主に2つあります。1つ目は、イヤフォンからの指示を使った仮想情報の提示です。例えば、ナビゲーションアプリを使用中に"左に曲がってください"という指示が着用者に聞こえるというケースが考えられます。

2つ目は、周囲からの音を拾った仮想情報の提示です。音の方向感を再現することで、実際には存在しない音があるように感じさせることが可能です。例えば、仮想の信号音が聞こえることで、不審な場所に誘導されてしまう可能性が考えられます。

実験では、参加者は攻撃があると事前に知らされてもかすかに14.9%が仮想の指示に従ってしまったことが分かりました。また音の方向を再現する実験では、45度の誤差を許容する結果が得られました。特に、後方からの音の再現については80%以上の正確さを示し、視覚的に確認できない後方からの攻撃が特に危険であることが明らかになりました。

さらに、研究チームは5種類のイヤフォン(Apple AirPods Pro、Bose QuietComfort Earbuds II、Samsung Galaxy Buds Pro、Sony WF-1000XM4、Anker Soundcore Liberty Air 2 Pro)を用いてその効果を測定しました。その結果、どのデバイスでも一定の音質で攻撃が可能であることが示されました。実際の実験で、参加者は攻撃を受けたことを事前に知らされていたにもかかわらず、80.6%の人々が音の方向を感知できず、特に信号音の重要性を認識していない場合が多かったことが示されています。

この研究は、今後のイヤフォン技術の発展と共に新たなセキュリティのリスクへの警鐘を鳴らすものであり、利用者はこのリスクを認識し、安全にデバイスを使用することが求められています。