科学

宇宙の「明るさ」に対する警告!「宇宙可視光背景放射」の新たな推定結果

2024-10-07

著者: 結衣

宇宙には1兆個もの銀河が存在すると考えられており、それぞれの光は極めて弱いものの、それでも宇宙全体を照らしています。このような宇宙の「明るさ」を決定する光は「宇宙可視光背景放射(Cosmic Optical Background; COB)」と呼ばれています。COBの推定値は、宇宙に存在する銀河の数とその大きさに基づいており、理論と実測においてどの程度の差があるかを知るための重要な指標です。

アメリカ航空宇宙局(NASA)の探査機「ニューホライズンズ」は、太陽系から遠く離れた深宇宙を探索することで、COBを正確に測ることが可能とされていましたが、2021年にはCOBの測定結果が公表されました。ただし、その結果は、不明な物質から放出される光が含まれているため、銀河から発せられる光の総量は理論上の予測よりも明らかに少ないことを示しました。

宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)のMarc Postman博士などの研究チームは、ニューホライズンズによって得られたデータをもとに、宇宙空間に存在するわずかな星間塵の量を調べ、COBの値を再調査することに成功しました。その結果、COBに存在する背景の光の成分は、実際には存在しないという解釈に至ったと報告しています。この発見は、宇宙探査の方法論を根本的に見直す必要性を示しています。

現在の研究では、宇宙モデリングで予測される銀河の数やそのサイズと、実際に観測された結果との間には大きな差があることが指摘されています。今後の宇宙探査計画では、特に暗い領域を調査することが、これらの問題を解決する鍵となるでしょう。また、宇宙背景放射に関するさらなる研究は、私たちの宇宙に対する理解を深めるために欠かせません。

これからの宇宙探査には、一見、光の少ない場所を掘り下げるための複雑な技術が必要とされます。それでも、これらの研究が進むことで、宇宙の「明るさ」や「暗さ」に新たな視点が加わり、私たちの宇宙理解が深まることが期待されます。