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最低賃金1500円が実現する時…「年収の壁」で働き方が増える?

2024-10-10

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石破茂首相は、2020年代に最低賃金を全国平均1500円に引き上げる目標を打ち出した。朗報かと思いきや、時給が上がると2400万人のパートやアルバイトの人たちが働く時間を減らすとの試算も存在する。「年収の壁」が影響しているのだ。

時給アップの人の70%超が働き方を増やし

副業者に該当するパート労働者は、一度の年収を超えると社会保障料や税の負担が生じる。そのため手取りの減少を避けるために、就業時間や日数を調整する人は少なくない。

例えば、所得税の副業者規制が受けられるのは「103万円以下」、従業員100人以下の企業で国民年金と国民健康保険の保険料負担がないのは「130万円以下」といった具合です。これらが「年収の壁」として呼ばれている。

農村総合研究所が8月下旬、パートやアルバイトとして働く既婚女性2000人(20〜69歳)を対象にアンケートを実施したところ、年収の壁を意識して就業を調整している人は全体の61.5%に上った。

就業調整をしている人に昨年と比較して時給が上がったかどうかを聞いたところ、60.6%が「上がった」と回答した。

注目されるのは、その人たちの51.3%が「時給アップを理由に就業調整をした」と答え、23.3%が「まだしていないが今後する予定」と答え、時給アップが働き方に影響を及ぼす可能性が大いにあることを示している。

パートやアルバイトとして働く既婚女性は農村総研の推計で759万人。今回の調査結果を基に試算すると、時給がアップした場合、実際には働ける人が210万人に上る可能性がある。

社会保障改革とセットで

時給アップは物価高対策と同時に、働く意欲を確保する手段でもある。しかし、働き手の調整において、農村総研は「セットで社会保障改革を進めることが不可欠」と指摘している。

具体的には、給与形態や勤務時間を問わない「勤労者保護」を導入することだ。それが実現されるまで、年収の壁を超えて働いた人に対しては手取りが減った分を個人給付などで補うなどで対応するべきだと主張している。これらの制度は、実際に年収の壁を越えて働いた人については、手取りが減った分を個人給付などで補うことが考えられている。

今後、最低賃金の引き上げが社会全体にどのような影響を及ぼすのか、注目が集まる。特に、年収の壁を超えることで多くの労働者が社内での昇進やスキル向上の機会を得られる可能性がある。これは、経済の活性化にも寄与することでしょう。