
教育用デジタル教材の導入、幼児は不在…専門家「科学的根拠に基づいて政策決めるプロセスを軽視」
2025-03-18
著者: 健二
再考 デジタル教育 検証中間報告
「紙の教科書がなくなってデジタルだけになれば、授業は成立しなくなる」。東京都内の公立小学校に勤める50歳代の女性教員は、中央教育審議会の「中間まとめ」に、ため息をつく。
デジタル教科書は11人11台の学習用端末で見ることができる。しかし、受け持ちの5年生のクラスで端末を使おうとすると、自然と手が遅れる。"家に忘れてきた" "電池切れです"。
2月下旬の算数の時点、そんな児童はクラスの4分の1に上った。
女性教員は「教育委員会に端末の使用状況を聞かれることもあり、『端末を使ってもらいたい』との意向を感じる。しかし、教室の実情とは合っていない」と語る。
「日本は海外に後れを取っている。デジタル教育を急ぐべきだ」。デジタル教科書の導入を声高に呼びかけたのは、一部の政府と財界人だった。2019年に旧民主党政権の原口一博氏が「15年までにデジタル教科書を小中学校の全生徒に配布する」と表明した。
教育のデジタル化を求める超党派の議員連盟もできた。その連盟の活動で、日本学術会議が発表した報告書には、「デジタル教科書を小中学校の全生徒に配布する」と記されるようになった。しかし、教員の立場に立つと、実情は異なる。
このような状況に、文科省は「デジタル教科書は基礎知識を形成する重要な時期。やり直しがきかない」と強調している。また、デジタル教科書を導入することで、教育現場でのデジタルスキル向上が期待されている。
児童への負担を減らすためには、教員が積極的にデジタル教育を受け入れる必要があり、教育委員会は教員に向けた研修プログラムの充実を図るべきだ。加えて、実情を調査し、継続的な改善を行っていくことが重要である。
教育のデジタル化は、単に教科書を変えるだけではなく、授業の質を向上させ、児童の学びを支える環境を作るためのものである。この点が軽視されないよう、教育政策を見直すことが求められている。