科学

ナンダルタール人と現生人類の特異を持つ子供、詳細な時代が判明

2025-03-18

著者: 裕美

化石の残り方にメッセージ性があって襲いかかる。

現生人類とナンダルタール人の特異を併せ持つことで知られるあの有名な子供の化石の年代が、新しい放射性炭素年代測定技術によって正確に特定されました。新技術は、子供が生まった時代のタイムラインをよりクリアにしてくれたそうです。

ラッド・チャイルドの謎を追え

1998年にポルトガルのラッド川流域で化石が発見されたことから、この子供は「ラッド・チャイルド」と呼ばれています。見つかったりんごのような堆積物は、学者たちが偶然見つけた遺跡の断片だったそうです。

発掘調査では、ほぼ完全な骨格に加え、動物の骨、木炭、海の貝殻で作られたピースなども出土しました。ただ、哀悼なことに骨の保存状態があまり良くなかったため、学者たちはこれまで正確な年代を測定できずにいました。

ラッド・チャイルドが生きていたのは、およそ43000年前から20000年前の後期旧石器時代のようです。「グレイフレット文化」と呼ばれる時代。グレイフレット文化は、「フィーナス小像」で知られています。

ともあれ2023年の遺伝子分析が示したように、長い間続いたにも関わらず、ヨーロッパ全土に広がっていたグレイフレット文化の人々は密接なつながりを持っていたそうです。

ラッド・チャイルドの年代特定には、2つのメリットがあります。まず、この子供が属していた集団が、ポルトガルのラッド川流域に住んでいたのかが正確にわかること。

さらに、この測定方法が他のグレイフレット文化やクロマニョン人の遺跡にも適用できる可能性があり、より広範なグループの移動や定住のタイムラインを明確にするかもしれません。これにより、古代の人類の移動や定住の歴史がより深く理解できることになるでしょう。

サンプルを提供したオックスフォード大学の放射性炭素年代測定の研究者であるベサン・リンコット氏も、この新たな測定方法に関して説明しています。

私たちは、比較的新しい技術である加合同位圧放射性炭素年代測定(Compound-specific radiocarbon dating)を用いることで、骨格の正確な年代を特定できるようになりました。通常、骨から採取したコラーゲンはそのまま年代が測定されますが、私たちの手法では、コラーゲンの中から特定のアミノ酸の定量を行い、より正確性を高めています。

この方法で、ナンダルタール人はいつ、どこに生存していたかを知る手がかりとなるでしょう。

驚異の遺跡が語るラッド・チャイルドの人生

この化石は、まさに驚異的に残っていたものだったようです。研究チームによると、ラッド・チャイルドが発見される数年前に、遺骸の所有者が小屋を建てるために土地を整備した際、考古学的な層が430m破壊されてしまったそうです。しかし、意図しない形で子供の化石が保存されていた可能性があります。

研究チームは、この子供の右上腕骨(上肢の骨)も含む2本の長い骨の成分を分析したところ、これによりこの子供が生きていた時代が判明しました。新たな測定結果、実はこの子供は43000年から27000年前、もしくは45000年から38000年前の時期に生きて切り抜けたことがわかりました。

リンコット氏は、「この測定結果に基づいて、次回も定期的にラッド・チャイルドの年代を調査しようと考えています」と語っています。

この試みは、ナンダルタール人や現生人類の進化に関する新たな視点を提供し、古代の人々が持っていた多様性や共存の形についての理解を深める手助けになるでしょう。