健康

「人間関係の3割が超困難?愛着障害は平均余命に影響する」

2024-10-11

著者: 蒼太

長年、発達障害や愛着障害を研究してきた豊富な経験を持つ精神科医・岩田聡司さんの最新刊『愛着障害と複雑性PTSD』より、現代人の生きづらさの原因を詳しく解説します。

生きづらさの正体

「愛着障害」という言葉が、一般にも広く知られるようになったのは、ここ10年ほどのことです。40年前には、この言葉が初めて公式に用いられた際、その意味するところは深刻な依存や心理的な苦痛を受けたり、心身の発達や社会性に困難をきたすことを指していました。

その後の研究では、愛着障害が子どもの時期における不安や恐れを促進し、また社会に対する不安感を助長することが分かっています。それらの影響は成人にまで及び、対人関係においても大きな影響を及ぼすことが知られています。

愛着障害を抱える人々は、親密な関係を築くことが困難であり、対人関係での不安感が強くなる傾向があります。これは、自分自身を信じる感覚が薄れ、他者との関係においても孤独を強めるためです。さらに、彼らは「愛着障害」を抱えたことによって辛い経験を強いられることになり、その蓄積が時間の経過と共に心身に不調をきたすことが研究によって示されています。

また、実際に「愛着障害」を抱える人々の多くは、自分以外の人々と深い結びつきを持つことができず、このことが繰り返し発生する自己評価の低下に繋がり、心理的な問題がより悪化してしまうのです。

愛着障害は、本来「安全基地」となるはずの親から十分なサポートを受けられなかったことに起因することが多く、そのため愛着障害を持つ人々は、社会においても自信を持てずに生きることが多いことが報告されています。

愛着スタイルの影響

無安定型愛着の人々は、自分自身に対する肯定的な感情が育ちにくく、他者に対しても信頼の感情を抱きづらいと言われています。こうしたスタイルを持つため、親密な関係を築くことができず、対人関係が破綻することが多いのも特徴です。

研究によると、愛着スタイルが不安定であればあるほど、社会的な適応能力が低下し、社会生活が困難になる可能性が高いことが分かっています。特に、愛着スタイルが不安定な人々の中には、成人期において「複雑性PTSD」の症状を呈する人も少なくなく、これは彼らが過去に経験した心理的トラウマが影響しているとされます。このような状況下では、愛着障害が影響を及ぼし、結果として人生の質を低下させる要因となるのです。

影響の拡大

実は愛着障害は、成長過程での生育環境や人間関係に密接に関連しており、その後の人生に多大な影響を及ぼします。信頼感の欠如は、仕事や学校などの生活環境においても様々な困難を引き起こすことがあるため、適切な支援が不可欠です。

最近では、愛着障害を抱えた子どもたちに向けた支援が始まっており、家庭や学校での適切な介入が求められています。愛着問題への理解が進むことで、早期に子どもたちの問題に対処することが可能になるでしょう。

このように、愛着障害は決して個人の問題に留まらず、社会全体に影響を及ぼす重要な問題であり、私たち一人ひとりが何を学び、どう向き合っていくかが問われています。愛着障害を理解し、愛着スタイルを修正することは、私たちの増大する社会的ストレスを和らげ、健康的な人間関係を築くための大きな一歩となるでしょう。