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斜洞で見つかった「1万7000年前に生まれていた幼児」のDNAを解読:「青い目」「親はおそらく同胞」などを物語る

2024-10-08

著者: 蒼太

イタリアのボローニャ大学をはじめとする研究者たちが発表した論文「Life history and ancestry of the late Upper Palaeolithic infant from Grotta delle Mura, Italy」は、約1万7000年前に生まれた幼児の遺骨に関する、多角的な分析を行った研究報告である。

1998年、イタリア南部ピエモンテ州の「Grotta delle Mura斜洞」で、石灰岩の下に埋まっていた幼児の骨格が発見された。この斜洞では、日常生活や人間の居住の痕跡も見つかっており、この幼児の埋葬だけが唯一のものだった。

今回の研究チームは、約16.5カ月(およそ72週)で亡くなったこの小さな男の子の遺骨(Le Mura 1と名付けられた)に対して最新の分析技術を応用した。放射性炭素年代測定によると、この骨は1万7320年から1万6910年前のものであることが推定され、これは地域の気候が最終氷期の最も寒い時から温暖化し始めた時期に対応している。

南イタリアのような温暖な気候下では、古代の骨のDNAは通常、大きく劣化してしまうが、この男の子の骨は斜洞の冷涼な環境のもとで良好に保存されていた。それにより、研究者たちは幼児のゲノムの75%を回収することに成功した。

このゲノム解析により、幼児の先祖や身体的特徴、さらには特定の健康状態に関する情報も得られた。本例では、幼児の肌の色は現代のヨーロッパ人よりも濃く、熱帯気候の人々よりも薄いことが明らかになった。このことが、青い目を持っていた可能性が高いことを示唆している。

また、この幼児が家族性肥満症(FHCまたはHCM)を患っていた可能性も懸念されている。これは心筋の肥大を引き起こす遺伝的疾患で、若年者でも心臓の健康や生存率に影響を及ぼす可能性がある。さらに、姉は近親者であったかもしれず、同胞であったことを示唆する証拠も存在する。

古代の猿人種と同様に、この幼児が持つ遺伝的特徴は、特定の生活様式や文化と関連していることが考えられる。本研究の結果は、当時の社会構造や環境適応に関する新しい理解を提供すると同時に、過去の人類の多様性に光を当てるものである.